大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和52年(オ)833号 判決

上告人

玉置武夫

右訴訟代理人

小川秀一

島田清

被上告人

有限会社

玉置増一商店

右代表者

玉置昌代

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人小川秀一、同島田清の上告理由一及び二について

有限会社の社員総会において、その社員である特定の者を取締役に選任すべき決議をする場合に、その特定の者は、右決議につき特別の利害関係を有する者に当たらず、したがつて、社員として右総会の決議について適法に議決権を行使することができるものと解するのが相当である。けだし、株式会社において、株主である取締役は、当該取締役の解任に関する株主総会の決議について商法二三九条五項にいう特別の利害関係を有する者に当たらないことは、当裁判所の判例とするところであり(昭和四一年(オ)第八六八号同四二年三月一四日第三小法廷判決・民集二一巻二号三七八頁)、有限会社法四一条において商法二三九条五項の規定を準用する有限会社の社員総会において、社員である特定の者を取締役に選任する場合でも、この理は、同様というべきであるからである。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

同三について

有限会社において持分が数名の共有に属する場合に、その共有者が社員の権利を行使すべき者一人を選定し、それを会社に届け出たときは、社員総会における共有者の議決権の正当な行使者は、右被選定者となるのであつて、共有者間で総会における個々の決議事項について逐一合意を要するとの取決めがされ、ある事項について共有者の間に意見の相違があつても、被選定者は、自己の判断に基づき議決権を行使しうると解すべきである。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論は、独自の見解であつて、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(吉田豊 大塚喜一郎 本林譲 栗本一夫)

上告代理人小川秀一、同島田清の上告理由

一、有限会社法第四一条商法第二三九条五項は「総会の決議には特別の利害関係を有する者は議決権を行使することを得ず」と規定しこれが強行規定であることは争いのないところである。そして取締役選任の決議をするにあたつて、特定の者を取締役に選任するが議案になつているときは、その者は特別の利害関係を有するものと解すべきか否かについて争いがあるが、有限会社の取締役は、株式会社のそれと異り、特定の者を取締役に選任し、その者を定款に規定したときは、(定款変更)その定款の規定が改正されるまでその者は半永久的に取締役となるのであるからこのように定款の規定を改定して特定の者を取締役に選任するときは、その者は特別の利害関係を有するものと解すべきである。

二、昭和四四年九月二二日開催の社員総会においては、玉置昌代、玉置良江、玉置夫規子、柿本智代らを取締役の候補者として特定し、その者を取締役に選任した後、その者の住所氏名を定款第二四条に掲記して定款を改定したのであるが、右の者は特別の利害関係を有する者であるから議決権を行使できないのにその有する持分の議決権を行使して取締役の選任、定款の改正をしたのは強行規定に反する決議であるから無効である。無効の決議につき、その無効の訴を提起するには期間的制限がない。この点について原判決は明かに誤つている。

三、〈以下、省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例